イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
ただの同期である私が、安藤にこんなことを言う資格などないことは十分承知している。けれど嫌なものは嫌なのだ。
自分でもコントロールできない感情に戸惑う。でも私以上に、安藤の方が困惑しているようだった。
安藤は手にしていた営業バッグを床に置き、整ったマッシュヘアを無造作に掻き乱す。
「あのさ……。俺、柴田にフラれたんだよな?」
ゴールデンウイークの最終日、私は安藤から好きだと告白された。あのときはたしかに安藤の思いに応えることができなかった。けれど、彼をフッたつもりはない。
「あれは……」
そのことを弁解しようとした矢先、安藤に言葉を遮られてしまった。
「木村さんと仲良くしないでって言われたら……柴田が俺のこと好きなんじゃないかって、勘違いしそうになって困るんだけど」
安藤の凛々しい眉が、ハの字に下がる。
彼を困らせるつもりなどなかったのに、結果的にそうなってしまったことが心苦しい。だから私は意を決して自分の思いを口にする。安藤が私に思いを告げてくれたように……。
「勘違いじゃないよ。私は安藤のことが好きです」
「えっ?」
「私は安藤のことが好き……」
しきりにまばたきを繰り返す安藤に自分の気持ちを二度伝えれば、彼の顔に笑みが浮かんだ。