イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
安藤と会えない間、彼のことが気になって仕方がなかったのも、木村さんに嫉妬したのも、彼のことが好きだから。
ようやく私は、安藤への思いは恋心で間違いないと確信したのだ。
速まる鼓動を抑えつつ安藤の顔を見上げると、彼の手が私に向かって伸びてくるのが見えた。
「穂香……大好き」
安藤の腕が私の背中に回る。
久しぶりに『穂香』と呼ばれたことと、ストレートな愛の言葉がうれしくて、このまま彼の首に腕を巻きつけて、唇を重ねたい衝動に駆られてしまう。けれどここは、職場のミーティングルーム。愛をたしかめ合う場所ではない。
安藤の胸に手をあてて力を込めて押し返すと、私の背中に回っていた彼の腕がスルリと解かれた。
安藤は「そうだ」と声をあげながら、ジャケットの内ポケットに手を入れる。
いったい、なにをしているのだろうと安藤の動向を見つめること数秒。安藤は「はい。これ」と言うと、内ポケットから出した手を私に差し出してきた。
「なに?」
まるでアメ玉でもくれるような安藤の動きにつられて手を伸ばしてみれば、手のひらにポトリと鍵が落ちてくる。
「穂香。これから急いで仕事終わらせるからマンションで俺の帰り、待っててくれる?」
もう仕事は終わったし、この後の予定は何もない。
「うん。待ってる」
断る理由などない私は、柔らかい笑みを浮かべる安藤にコクリとうなずいた。