イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「でも私もその週じゃないと困るんです!」
鈴木さんの神経を逆なでせずに冷静に話合うつもりでいたのに、つい興奮して大きな声をあげてしまった。
気まずい思いで鈴木さんを見つめれば、彼女が体の前で腕を組んだ。
「そう言われても無理なものは無理よ。それにもう、キャンセル料取られるし。そうだわ。柴田さんがキャンセル料を払ってくれるなら、予定を変更してあげてもいいけど?」
鈴木さんの顔に、勝ち誇ったような笑みが浮かぶ。
きっと彼女は、私がキャンセル料金を払えないと思っているのだろう。
私を見下し、交換条件を出してくる鈴木さんが憎らしい。
彼女を見返したいという気持ちが胸の中で大きく膨らんでいき、一瞬「キャンセル料を払います!」と言いそうになってしまった。
けれど私がこんな無茶なことをして北海道旅行を実現させても、朝陽は喜んでくれないだろう。
「わかりました。もういいです」
これ以上、鈴木さんと話しても時間の無駄だ。
八月の第三週に夏季休暇を取ることをあきらめた途端、視界がゆらゆらと揺れ出す。
自分の思い通りいかないことなど、たくさんあるとわかっている。それでもやはり、朝陽との初めての旅行が幻となってしまったことが悔しくて悲しい。