イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

下調べもなくこのお寿司屋さんに入ったけれど、正解だったかも。

オーダーした特上にぎりへの期待を膨らませていると、ビールが運ばれてきた。

「ほら」

安藤がビール瓶を手に取る。

「ありがとう」

グラスを手にすると、安藤にビールを注いでもらう。

「じゃあ、私も」

「ん、サンキュ」

瓶を受け取り、安藤が手にしているグラスにビールを注ぐ。トクトクと音を立ててグラスを満たしていく黄金色の液体は、仕事終わりの私の目にとても魅力的に映った。

「乾杯」

「乾杯」

なにに乾杯なのかさっぱりわからない。それでもお互いのグラスをカチンと合わせてビールを喉に流し込んだ。

「プッハァ! 生き返る!」

「どこのオヤジだよ」

ビールを飲んで息を吹き出した私に浴びせられたのは、安藤の鋭いツッコミ。冷ややかな視線を私に向ける安藤が気に入らない。

「いいでしょ。ほら、安藤。注いでよ」

「はい、はい」

手にしているグラスを安藤の前に差し、並々とビールを注いでもらった。

入社して五年目の安藤の営業成績は、横浜支店で常にトップ。仕事ができる安藤を顎で使っているみたいで気分がいい。

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