イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

青い湖面の上を船体がすべるように出港する。私と朝陽が乗船したのは海賊船と呼ばれる遊覧船。フランスの戦艦をモデルにしたという赤と白の海賊船は四階建てで、帆を張るためのマストが三本立っている大きな船だ。

乗船して早々に甲板へ向かった私の目に映ったのは、芦ノ湖の絶景。太陽の日差しを浴びてキラキラと光を反射する湖面、湖を囲む山々の濃い緑、そして雄大な富士山。

朝陽とともに甲板の柵にもたれかかりながら船上からの景色を楽しんでいると、私たちのすぐ脇を三人の子供が元気よく走り過ぎて行った。

「ねえ、朝陽。今度蓮くんと一緒に来ようよ」

子供たちの後ろ姿を見て思い出すのは、やはり蓮くんのこと。大人の私でさえ滅多に乗船することのない海賊船はテンションが上がる。蓮くんを連れてきたら絶対喜んでくれる。きっと朝陽も私と同じ考えだと思った。しかし柵にもたれかかっていた体を起こして半回転した朝陽の口から飛び出たのは、意表を突いた言葉だった。

「蓮もいいんだけどさ……。今度はさ……俺たちの子供を連れて来たいなって……思ってるんだけど」

私から視線を逸らした朝陽が、たどたどしい口調でつぶやく。

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