イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「おはよう」
寝返りを打つと同時に瞼をゆっくり開いた朝陽に、朝の挨拶をする。
「……おはよ」
寝起きの掠れた声、あらわになっている逞しい胸板、そして照れたような笑顔。朝から無防備な朝陽の姿を間近で見られる喜びに浸る。
旅行二日目の今日は、黒たまごで有名な大涌谷に行き、箱根の玄関口でもある箱根湯本のお店を見て回る予定になっている。
箱根観光は楽しみだけど、今日で旅行が終わってしまうのは寂しい……。
ふたりきりの時間を惜しむように、横たわる朝陽に体を寄せる。すると朝陽の大きな手が私の体のラインをなぞるようにすべり始めた。
「穂香……朝から積極的だな」
昨夜、私たちは何度もお互いを求め合い、一糸まとわない姿で眠りに就いた。体に直に伝わる朝陽の手の温もりが熱い。
ただ私は寝起きの朝陽に甘えたかっただけ。自ら朝陽を求めたと勘違いされたことが恥ずかしい。
「あっ、ちょっと待って……朝陽……」
「ダメ。待てない」
下へ下へと移動していく朝陽の手の動きを拒んでみても、私が感じるところを的確に攻めてくる彼の指先に抗うことができない。
結局、朝陽に抵抗できず、朝から恥ずかしい声をあげてしまった。
朝陽と一緒にいると、時間が過ぎるのが本当に早い。
「朝陽。今回の旅行、本当に楽しかった。ありがとう」
箱根を後にした車の中で、旅行の計画と手配をしてくれた朝陽にお礼を告げた。するとハンドルを握る朝陽の横顔に笑みが浮かぶ。
「今度は俺たちの子供を連れて来ような?」
結婚のニュアンスを含んだ言葉が朝陽の口から出たのは、今回で二度目。
ハッキリとプロポーズされたわけじゃないけれど、いつかそのときが訪れることを願いつつ「うん」と返事をした。