イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
そんな小さな優越感に浸っていた矢先、注文していたお寿司が運ばれてきた。
「お待たせいたしました」
目の前に置かれた特上にぎりにテンションが一気に上がる。
「うわぁ! おいしそう! いただきます!」
早速、脂がのって光っている大トロにぎりを口に運ぶ。
「んっ! おいしい!」
口に入れた瞬間にとろけた大トロにひとり興奮していれば、白い目で私を見つめる安藤と視線が合った。
「単純」
「なんとでも言ってください。ああ、おいしい。次はボタン海老を食べようかなぁ」
大トロを堪能したばかりの私には、安藤の嫌味など痛くもかゆくもない。ご機嫌なままボタン海老のにぎりを食べると、海老の旨味が口の中いっぱいに広がった。
「ん~、甘~い」
箸を置いて大袈裟に頬に手をあてた私を見た安藤が、クスクスと笑い出す。
「柴田って、うまそうに食うな」
「そう?」
「ああ」
ついさっきまで私をぞんざいに扱っていたくせに、今では二重の瞳を細めて白い歯を覗かせて笑顔を見せている。
安藤のイケメンオーラは半端ない。
木村さんを始め、横浜支店の女子行員が安藤に好意を持つのも仕方ないことなのかもしれない。