イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「だって……寂しいって言ったら、朝陽困るでしょ?」
「そりゃ、そうだけど……。穂香、我慢させてごめんな」
「ううん」
私を気遣ってくれる朝陽の胸に、甘えるように頬を寄せた。
私を抱きしめる朝陽の体温を身近に感じれば感じるほど、離れがたくなってしまう。
「本当はね、私……朝陽に大阪に行ってほしくないって思ってるの」
大阪支店は東京にある本店の次に大きな支店。朝陽の今回の異動は栄転と言えるだろう。
朝陽の努力が認められたことは、同期として誇らしく思う。しかし彼女の立場からしてみたら、大阪に行ってほしくないというのが本音。
朝陽の栄転を素直に喜んであげられないことが申し訳なくて、彼の腕の中でうつむいた。すると私の背中に回っていた朝陽の腕に、キュッと力がこもる。
「俺も穂香と離れたくないよ」
離れてしまうことを寂しいと思っているのは私だけじゃない……。
今までバタバタしてお互いの気持ちをたしかめ合う時間が持てなかった分、私への思いがあふれる朝陽の言葉が胸に沁み入った。けれど、それでも不安を拭い去ることができない。
「ねえ、朝陽。私たち離れ離れになっても……大丈夫だよね?」
この先どんなことがあったとしても、私と朝陽の関係は永遠に壊れないというたしかな証拠がほしい。
顔を上げて、すがるように朝陽を見つめた。