イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「中山。さっきは悪かった。ごめん」
全員が座敷部屋に戻るとすぐに、朝陽が中山くんに頭を下げた。
「いや。そのことは気にしなくていいから。それより安藤と柴田の関係、みんなに説明してくれるよな?」
中山くんが眼鏡のブリッジを中指でクイッと押し上げる。
私たちがつき合っていることを同期にも内緒にしていたのは、要らぬ波風を立てたくなかったから。カッコいい朝陽は同期の女子にも人気がある。
でも通路の先で私と朝陽が抱き合っている姿を見られた今となっては、つき合っていることを隠し通すのは不可能だ。
同期の視線が集中する中、朝陽が私を真っ直ぐ見据える。
それは私と朝陽の関係を、同期のみんなに打ち明けてもいいか?という確認。朝陽の瞳を見つめ返し、コクリとうなずく。
「俺と穂香は結婚を前提につき合ってます!」
私たちの関係を朝陽が包み隠さず告白すれば、いたるところでどよめきが起きた。そんな中、朝陽が話を続ける。
「でも俺、大阪支店に異動だろ。穂香には寂しい思いをさせると思うんだ。だからみんな、穂香のことをよろしく頼みます」
朝陽が同期のみんなに向かって、深々と頭を下げた。
体力的にも精神的にも今一番大変な思いをしているのは、大阪支店へ異動する朝陽。それなのに朝陽は横浜に残る私を気にかけてくれた。
同期がざわめく中、朝陽の思いやりをうれしく思いながら彼の隣に並ぶと、同じように頭を下げた。