イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

私に対してなにか後ろめたいことがあるのではないかと気になってしまい、足を一歩踏み出し朝陽に詰め寄る。けれど朝陽の口から出たのは、私の予想に反した甘い言葉だった。

「いや……。今日の穂香、かわいいなって思ってさ」

朝陽は大きな手で口もとを隠して一瞬私に視線を戻したものの、またすぐにそっぽを向いてしまった。

久しぶりに会う朝陽にかわいいと思ってもらいたい一心で、今日は秋を意識した黄色のタータンチェックのフレアスカートを選び、普段よりも赤みが強いグロスを唇にのせた。

気合いを入れたファッションとメイクをスルーせずに、褒めてくれてうれしい。でも耳を真っ赤にして恥ずかしがられたら、私まで照れてしまう。

「ありがとう。あ、朝陽もカッコいいよ」

うつむきがちに思いを伝えると、朝陽のシャツの裾をそっと掴んだ。

「ん……サンキュ。じゃあ行こうか」

「う、うん」

なんとなく気恥ずかしさを感じてしまうのは、大阪に異動した朝陽と会うのが二週間ぶりだから?

緊張しながらお互いを褒め合う私たちは、まるで中学生みたいだ。

そんなこと思いつつ朝陽が差し出してきた手に自分の手を重ねると、新大阪駅の構内を進んだ。

< 154 / 210 >

この作品をシェア

pagetop