イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
よつば銀行大阪支店から歩くこと十五分。朝陽の住むマンションにたどり着く。
地上十階建てのグレーの外観のマンションの近くにはコンビニやスーパーもあって、利便性はよさそうだ。
ロックを解除するとエントランスを進み、エレベーターに乗り込んで七階まで上がる。朝陽の部屋は七〇三号室。
「どうぞ」
「お邪魔します」
玄関を開けてドアを押さえてくれる朝陽に挨拶すると、パンプスを脱いだ。
「穂香。部屋を案内するよ」
「うん」
私に続いて部屋に上がった朝陽が、通路の右側のドアを開ける。
「ここが寝室」
後任担当者との引継ぎや送迎会などで忙しかったため、横浜から大阪への引っ越しは荷物の梱包と荷解きをすべて業者に任せるプランを利用した。
そのため手つかずのままの荷物はなく、備えつけのクローゼットとベッドがある寝室は綺麗に片づいている。
けれど部屋が狭く感じるのは何故?
寝室をグルリと見渡すと、あることにすぐ気づいた。
「あれっ? ベッドが変わった?」
六帖ほどありそうな部屋を占領しているのは、余裕で寝返りが打てそうな大きなベッド。
首を傾げて尋ねれば、朝陽の口角がニヤリと上がった。
「正解。大きいベッドの方が、穂香といろんなことができると思ってさ」
「いろんなことって……」
朝陽が意味深に言う『いろんなこと』については、だいたいの予想がつく。けれど、それをストレートに喜ぶのは少しおかしいような気がして、どんな反応をしたらいいのか困ってしまう。