イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
やっぱり回らないお寿司屋さんはおいしいな。
特上にぎりを堪能してご機嫌な私がトイレから戻ると、安藤がイスから立ち上がる。
「帰るか」
「うん。すみません、会計をお願いします」
バッグからお財布を取り出し、店員さんに声をかけた。
今日は私のおごり。一万円超の出費は痛いけれど、どの握りもおいしかったし、安藤が大トロをくれたからよしとしよう。
そう思ったのに……。
「お連れ様からすでにいただいております」
「えっ? そうなんですか?」
「はい」
店員さんの言葉に驚き、後ろを振り向く。しかし安藤はお店の自動ドアを通り、外に出て行ってしまった。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございました」
店員さんに挨拶をすると、安藤の後を急いで追う。
「安藤! 立て替えてくれたんだね。ありがとう。全部でいくらだった?」
横浜駅に向かう安藤に尋ねる。けれど返ってきたのは思いがけない言葉だった。
「今日は俺がおごる」
「えっ? どうして?」
今日は私がお寿司をおごる。そう決めたのは安藤だ。