イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「アンタ、もしかして安藤くんの彼女?」

「そ、そうですけど……あなたは?」

関東とは違う『アンタ』のアクセントで話す彼女に名前を尋ねる。しかし彼女は私の質問には答えずに、自分のペースで話を続けた。

「なあ、立ち話もなんやから中に入れてくれへん?」

ここは朝陽のマンション。彼の許可なく知らない人を招き入れるわけにはいかないし、朝陽のウチに私以外の女は絶対に上がらせない。

「私が下に行きます」

名前も朝陽との関係もわからない彼女に対抗心をメラメラと燃やしながら通話を終わらせると、エントランスに向かった。



「あの、朝陽にどのような用でしょうか」

ケーキが入っているとひと目でわかる白い箱を手にしている女性に声をかければ、赤いコートにロングブーツ姿の彼女の瞳が下から上へゆっくりと動いた。

まるで私を品定めするような彼女の視線が気に障る。けれど彼女は『安藤くん、おる?』とドアホン越しに尋ねてきた。

彼女は朝陽に急な仕事が入ったことを知らない。

そのことが妙にうれしくて、彼女に対して優越感を抱いた。しかし、それも束の間。彼女の口から耳を疑う言葉が飛び出る。

「安藤くん、もう熱下がったん?」

「えっ? 熱?」

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