イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

朝陽とは毎日欠かさずメッセージをやり取りしている。でも熱が出たことは聞いてない。

初めて聞く話に驚き、声をあげる私を見た彼女が鼻先で笑った。

「アンタ安藤くんの彼女なのに、そないなことも知らへんの」

「……」

私を小馬鹿にする彼女になにも言い返せないことが悔しくて、下唇をギュッと噛みしめた。

そんな私の前で、彼女が大きなため息をつく。

「安藤くんと連絡取れへんから、また寝込んどるかと思ってマンションに来てみたけど……。あっ、これ。安藤くんに渡しといて」

彼女はそう言うと、私の前に白い箱を差し出してきた。

ぞんざいな態度を示す彼女のことは気に入らない。けれど彼女は朝陽の体調を心配してマンションに訪れた。

ひょっとしたら彼女は、私が思うより悪い人じゃないのかもしれない。

「ありがとうございます。あの、あなたのお名前教えてください」

手土産を受け取って朝陽に渡しても、彼女の名前がわからないのでは話にならない。

差し出された白い箱を受け取り、彼女が名乗るのを待った。しかし彼女の口から出たのは、思いがけない言葉だった。

「うち、安藤くんとキスしたんや」

「……はい?」

なんの脈略もなく飛び出た彼女の言葉が理解できず、思わず首を傾げる。

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