イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「もしかして彼女、この部屋に上がったの?」
さらに詳しい状況が知りたくて、朝陽の後を慌てて追いかける。
「寝ていたのにスマホとチャイムを何度も鳴らされて……。仕方なく玄関開けたら押し入られて……襲われた」
ソファに腰を下ろした朝陽が不機嫌そうに髪の毛をクシャリと掻いた。
熱でフラフラなときに、強引に押しかけてきた彼女を拒否するのは不可能だったかもしれない。でもだからといって、この部屋に私以外の女性が上がるのは、やはり嫌……。
「熱が出たこと、どうして言ってくれなかったの?」
朝陽が熱を出したことを彼女が知っていて、私が知らないのは納得できない。つい朝陽を責めるような言葉が口から出てしまう。
「心配かけたくなかったのもあるけど……。横浜にいる穂香に熱があるって言ってもどうしようもないだろ?」
「そうだけど……」
投げやりな朝陽の言葉が、私の胸にチクリと刺さった。
久しぶりに訪れた朝陽の部屋が散らかっていたのは、熱が出て家事ができなかったから。テーブルの上に散乱していた空のペットボトルやプリンとゼリーの空き容器は、彼女からの差し入れだったのかもしれない。
朝陽の彼女は私なのに熱を出して苦しんでいることも知らず、看病すらできなかったことが悔しくて仕方ない。
ソファに座ってうつむく朝陽の前で、下唇をキュッと噛んだ。