イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「急に仕事休んだから引継ぎがうまくいかなくて……。だから今日、取引先の部長に頭下げに行ってきた」
朝陽は仕事のトラブルについて説明すると、気だるそうにネクタイを緩めた。
彼女とのキスは事故のようなもの。そう思ってみても気持ちをすぐに切り替えることは難しくて、ため息交じりに「そう……」とだけしか言えなかった。
こんな気持ちになるなら、本当のことなんか聞かなければよかった……。
肩を落として朝陽を問い詰めたことを後悔した。すると朝陽の小さな声が耳に届く。
「俺の心配はしてくれないんだな」
「えっ?」
「たしかに穂香以外の人とキスしたのは悪かったけど、少しは俺の体調を気にしてくれてもいいじゃないの?」
私に対する不満の言葉が、朝陽の口から出る。
休みを返上して取引先に頭を下げに行った朝陽を労わってあげたい気持ちはもちろんある。でも朝陽と彼女がキスしたことをすぐに水に流せるほど、私は器用じゃない。
「そんなこと言うなら、熱が出たこと教えてくれればよかったじゃない」
自分の要求を押しつけてくる朝陽に素直になれなくて、すぐに反論してしまった。しかし朝陽もさらに言い返してくる。
「熱が出って連絡したら、仕事休んで大阪まで来てくれたのかよ」
「それは……」
言葉に詰まってしまったのは朝陽が熱を出したことを知ったとしても、大阪まで看病に来られなかったと思ったから。