イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「どう? 落ち着いた?」
「はい。迷惑かけてすみませんでした」
ハンカチで涙を拭い、向かいの席にいる根本さんにペコリと頭を下げる。
根本さんが連れて来てくれたのは、新大阪駅の構内にあるコーヒーショップ。根本さんは突然泣き出した私を気遣って人目のつかない奥の席を選び、ホットコーヒーをオーダーしてくれた。
「迷惑だなんて思ってないよ。取りあえず冷めないうちにひと口飲んだら?」
私が泣いた理由を問い詰めず、コーヒーを勧める根本さんの優しさがうれしい。
「はい。いただきます」
カップを両手で包む見込むように持ちホットコーヒーに口をつければ、心がホッと安らいだ。しかしそれも束の間、根本さんの口から予期せぬ言葉が飛び出す。
「実は俺、そこの旅行代理店に勤めている彼女と結婚するんだ」
根本さんはそう言うと、コーヒーショップの外を指さした。彼が指さす方向へ視線を移動させればガラス窓の向こう側に、すでにシャッターが閉まったショップが見える。
「おめでとうございます」
あまりにも唐突すぎる根本さんの報告に驚いたものの、すぐにお祝いの言葉を伝えた。
「ありがとう」
根本さんの顔に笑みが浮かぶ。
今日はクリスマスイブ。きっとこれから仕事終わりの彼女とクリスマスデートを楽しむのだろう。そこでハッと気になったのは、根本さんの予定だ。