イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「あっ、もしかして待ち合わせですか?」

「そうなんだけど、閉店作業があるからあと二十分ぐらいは大丈夫」

根本さんはそう言いながら、左手首の腕時計に視線を落とした。

私のせいで待ち合わせに遅れて、婚約者とケンカになっては申し訳ない。

「そうですか」

根本さんの返事を聞きホッと胸をなで下ろすと、再びコーヒーをひと口味わった。すると腕時計から視線を上げた根本さんが、ついに本題を切り出してくる。

「それであまり時間がないからストレートに聞くけど、穂香と安藤くんってつき合ってるの?」

根本さんは三年以上も前に、横浜支店から大阪支店に営業課長として異動した。今、根本さんと朝陽は上司と部下という関係。もちろん私と朝陽が同期だということも知っている。

そんな根本さんが私と朝陽の仲を真っ先に疑うのは当然だ。

この期に及んで嘘をついても仕方ない……。

「……はい。今年の五月から」

朝陽とつき合っていることを短い言葉で認めれば、向かいの席の根本さんがコクリとうなずいた。

「そうか。安藤くん、がんばっているよ」

「そうですか」

大阪支店で朝陽がどのように仕事をしているのか、まったくわからなかった私にとって、根本さんの褒め言葉はとてもうれしいものだった。しかし根本さんの眉間にシワが寄る。

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