イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「でも、今は少し空回りしている感じかな」
「空回り?」
根本さんの意外な言葉に驚き、首を傾げた。
「まだ大阪に馴染めてないというか……。正直に言っちゃうと、標準語で話す安藤くんは堅苦しい印象があるみたいで取引先からはあまり評判がよくないんだ」
部下である朝陽の様子を包み隠さず教えてくれるのはありがたい。けれど根本さんの口から出た事実を、すぐに鵜呑みにすることはできなかった。
「そんな……」
横浜支店では営業成績が常にトップだった朝陽が、大阪支店では苦戦しているとはとても信じられない。
「環境の変化に言葉の違いとか、異動は結構負担が大きいからね」
「……」
異動経験者である根本さんの言葉はとても説得力があり、『精神的に余裕ない』と弱音を吐いた朝陽を責めてしまったことを深く後悔した。
今すぐ朝陽に謝りたい。でもマンションを勝手に飛び出してタクシーに乗った私を、朝陽は許してくれる?
今まで些細な言い争いは何度かしたことはあるけれど、ここまでひどいケンカに発展したのは今日が初めて。不安が頭に渦巻いて、心が決まらない。
うつむいたまま考えにふけっていると、根本さんの優しい声が耳に届いた。
「安藤くん、体調崩しているみたいだから労わってあげてよ」
私と朝陽を心配してくれる根本さんの言葉はとてもうれしい。しかし同時に、ある疑問がふと浮かぶ。