イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「どうして、親身になってくれるんですか?」

元カノの私に親切にしても、根本さんにメリットはないはずだ。

答えが知りたくて、向かいの席にいる根本さんをじっと見つめた。

「穂香には悪いことしたと思っているんだ」

「……」

根本さんが言う『悪いこと』とは、私とアミという娘(こ)と二股をかけていたこと。今になってそのことを責めるつもりはないけれど、当時を思い返せばやはり胸が痛む。

「五月に東京に行ったとき穂香に連絡したのは、過去のことをもう一度きちんと謝りたかったからなんだ」

「……そうだったんですか」

根本さんが突然連絡してきたのは、そういうことだったんだ……。

七カ月以上前の出来事に納得してコクリとうなずくと、根本さんの話に引き続き耳を澄ます。

「今さらだけど、あのときは本当に悪かった。ごめん。でも言い訳に聞こえるかもしれないけれど、俺は穂香のこと本当に好きだった。だから穂香には幸せになってほしいと心から思っているんだ」

根本さんが二股かけていたのは、私のことは遊びだったからと思い込んでいた。でもそれは間違いで、私は根本さんにきちんと愛されていた。

初めて知った根本さんの本心が、私の古い傷を癒す魔法の言葉のように胸に響く。

「……私も根本さんのこと、好きでした」

偶然会ったクリスマスイブに、私たちは過去形の言葉でお互いの思いを再確認した。

< 180 / 210 >

この作品をシェア

pagetop