イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

思わぬ再会を果たした二十分後。根本さんとともに、コーヒーショップを後にする。

やはり朝陽に謝ろう……。

ようやく決心がついたのは、これから婚約者とクリスマスデートを楽しむ根本さんをうらやましく思ったから。

今の時刻は午後八時三十分。まだクリスマスイブは終わっていない。

クリスマスイルミネーションなんか見られなくてもいい。ただ朝陽の隣にいたい……。

「根本さん。今日はありがとうございました」

朝陽と仲直りするきっかけを与えてくれた根本さんに頭を下げる。するとまさかの言葉が根本さんの口から飛び出した。

「ほな、安藤くんと仲良くな」

「えっ?」

初めて聞く根本さんの関西弁がおもしろい。

思わずプッと吹き出せば、根本さんもクスッと笑った。

「それじゃあ、元気で」

「はい。根本さんも」

改めて標準語で挨拶を交わすと、根本さんは婚約者の勤務先である旅行代理店の方へ向かって行った。

根本さんと話した有意義な時間に満足しながら、朝陽のマンションに戻るために一歩を踏み出す。その矢先、私に視線を向けたまま佇むある人物の姿を見つけた。駅の構内を忙しく行き交う人の肩が体にあたっても、その人物は身じろぎもしなかった。

「朝陽?」

愕然としたまま立ち尽くしていたのは朝陽。急いで朝陽のもとに急いで駆け寄れば、彼のこめかみから薄っすらと汗が伝っていることに気がついた。

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