イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
この寒空の中、汗が滲むほど必死になって私を探し回ってくれたの?
「朝陽。ごめんなさい」
朝陽に対して申し訳ない気持ちが大きく膨らみ、頭を下げる。けれど朝陽は無表情のまま私を見つめた。
「それは、なにに対しての謝罪?」
「これは……」
大阪支店に異動して大変な思いをしている朝陽に寄り添ってあげられなかったこと。熱が出て苦しんでいるのに、看病してあげられなかったこと。それから大阪支店の山口さんとキスしたのを責めたこと。そして黙ったままマンションを飛び出し、追い駆けてくる朝陽を振り切ってタクシーに乗っただけでなく、彼からの着信も無視したこと。
朝陽に対して謝らなければならないことが多すぎて、すぐに考えがまとまらない。返事に悩んでいると、朝陽の口から衝撃的な言葉が吐き出された。
「元カレと会っていたことを謝られても困るんだけど」
朝陽が苛立ったように前髪をクシャリと掻き上げる。
「どうして……それを?」
私が驚いたのは、根本さんと一緒にいたところを朝陽に目撃されたことではない。私と根本さんが以前つき合っていたのを、朝陽が知っていたことに驚いたのだ。
私たちは過去の恋愛について語ったことは、今まで一度もない。
「俺は横浜支店に配属されてすぐに、穂香のことが好きになったんだ。惚れた女を見ていれば、そんなことすぐにわかるさ」