イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
Stage.10
彼氏の決断
人生最悪のクリスマスイブが終わった翌日の午前八時。枕もとに置いていたスマホがブルブルと震え出す。
スマホ画面に映し出された着信相手の名前を見ただけで心が乱れる。しかしこのまま着信を無視するわけにはいかない。
ベッドの上で上半身を起こして気持ちを落ち着かせるために深呼吸をすると、スマホの応答ボタンをタップした。
「もしもし。朝陽?」
日曜日の朝、私に連絡をしてきたのは朝陽。
『ああ、俺。朝早くからごめん』
「ううん。起きていたから大丈夫」
昨日、あれから……。
朝陽と新大阪駅で別れてから、私は最終の新幹線に乗って横浜に帰った。
家でお風呂に入っても冷え切った体と心は温まらず、布団に入っても頭が冴えて眠れずに朝を迎えた。
割と早い午前八時という時間に連絡してきたのは、朝陽も眠れない夜を過ごしたからかもしれない。
『穂香……昨日はごめん』
「ううん。私もいろいろとごめんなさい」
昨日一日で起きた様々な出来事が頭の中によみがえり、お互い謝ったというのに気分が重い。そんな中、歯切れの悪い朝陽の声がスマホ越しに聞こえてきた。
『あのさ……俺、ひと晩考えたんだけど……』
物事をハッキリと言うことが多い朝陽が口ごもるのは、その話が私にとっていいものではないから?
朝陽の話なんか聞きたくない。でも私から逃げずに連絡をくれた朝陽を、ないがしろにはできない。