イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「了解」

中山くんは店員さんを呼ぶとレッドアイとジントニック、そしてチーズの盛り合わせと温野菜のバーニャカウダをオーダーした。

ビルの七階にあるこのお店の窓からは、ライトアップされた横浜ベイブリッジが綺麗に見える。

オシャレなお店を選び、女子が好きそうなメニューをチョイスしてくれる中山くんのさりげない気配りがうれしい。けれど私はお酒と食事を楽しむために、中山くんと会っているのではない。

「中山くん。朝陽の話ってなに?」

「まあ、焦らないでよ。話は乾杯してから。ね?」

早々に本題を切り出す私の前で、中山くんは縁なし眼鏡のブリッジを左手の中指でクイッと上げる。

中山くんの落ち着き払った様子を見たら、余裕のない自分が妙に子供染みているように思えてならなかった。

「うん」

うなずく私を見た中山くんがクスッと笑う。

「仕事はどう? 忙しい?」

「うん。忙しいよ。でも中山くんも忙しいでしょ?」

「まあね」

中山くんとは同じ支店で勤務したことはないけれど、忙しいのはどの支店も同じ。お互いの苦労が手に取るように理解できて、顔を見合わせると思わず苦笑してしまった。

すると「お待たせいたしました」という店員さんの声とともに私の前にレッドアイが、中山くんの前にはジントニックが注がれたグラスが置かれる。

< 191 / 210 >

この作品をシェア

pagetop