イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

朝陽が私と距離を置いた本当の理由を同期の中山くんから聞いて思ったのは、このままではいけないということ。

大阪でひとりがんばっている朝陽と同じように、私も成長したい……。

その思いを胸に、まずは銀行窓口セールスの資格取得に向けてテキストを取り寄せると机に向かった。しかし学生の頃とは違い、テキストを読んでも内容がすんなりと頭に入っていかず、すぐに眠気に襲われてしまう。

これは、ヤバい……。

久しぶりの勉強に苦戦しつつも、少しずつテキストを進めていった。

それから、ただいまこれにもチャレンジ中。

「ちょっと、穂香。これ中まで火が通ってないじゃない」

お皿に盛りつけたハンバーグに箸を入れた母親が顔をしかめる。

「えっ、嘘っ!」

母親の指摘を聞いてハンバーグをふたつに割れば、中はまだ赤くて生焼けだとひと目でわかった。

「はい。やり直し」

「うっ……はい」

仕事が休みの土日には母親と一緒にキッチンに立つ。

いつか朝陽に「うまい!」と言ってもらえる日が訪れることを願って、慣れない料理に奮闘した。

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