イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
返事に少しの間が空いてしまったのは、即答できるほど元気ではなかったから。体はどこも悪くないけれど、朝陽に会えず、声も聞けない毎日はつらくて悲しい。
しかし、その思いを朝陽に伝えてもきっと困らせるだけ。だから大阪でがんばっている朝陽に心配かけないように、わざと明るい声で返事をした。
『そっか。あのさ、昨日穂香に郵便出したんだけど届いたかなと思ってさ』
「うん。届いたよ。新幹線の乗車券だよね?」
つい先ほど、封筒を開けて中身を確認したばかりの乗車券を再び手に取る。
『ああ、そう。それでさ……穂香に頼みがあるんだけど』
「なに?」
スマホ越しの朝陽の口から、いったいどんな頼みごとが飛び出すのだろうかと、ドキドキと鼓動を高ぶらせながら耳を澄ました。
『今度、蓮を預かることになったんだ。だからまた俺と一緒に子育てしてほしくて……』
朝陽が郵送してきた新幹線の乗車券の往路の指定日は四月最終週の土曜日。復路の指定日はその翌日の日曜日。
今回、蓮くんを預かるのは二日間のようだ。
前回と同じように、蓮くんを預かることを『子育て』と言う朝陽がおもしろい。
「うん。いいよ。私も蓮くんに会いたかったし」
『サンキュ』
朝陽のお礼の言葉を聞いたら、ふわりと微笑む彼の顔が目に浮かんだ。
私の『蓮くんに会いたかった』という言葉は決して嘘じゃない。けれど私が今一番会いたいと願っているのは朝陽だけ。
今すぐ新幹線に飛び乗ってしまいたいという衝動をグッと堪えると、遠く離れた大阪にいる朝陽に思いを馳せた。