イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
安藤の話を聞くために、駅前のコーヒーショップに入る。私はホットコーヒーを、安藤はキャラメルフラペチーノをオーダーした。
甘くて冷たいキャラメルフラペチーノはたしかにおいしい。けれどお寿司をお腹いっぱいに食べた後に、ホイップクリームがたっぷりとのったフラペチーノを飲んだら確実に太る。
体型のことなど気にせずに、好きな物を好きなときに好きなだけ食べたり飲んだりできる細身の安藤がうらやましくて、店の奥の席に座ってキャラメルフラペチーノを飲み始めた彼の様子をじっと見つめた。
「もしかして、ひと口ほしいなぁ、とか思ってる?」
ストローから口を離した安藤が、ニヤついた笑みを浮かべて私に尋ねてくる。
ひと口ほしくないと言ったら、嘘になる。でも人がオーダーした物をほしがるほど、私は子供じゃない。
「まさかっ!」
「やせ我慢しなくていいのに。ほら」
慌てて否定した私の前に、キャラメルフラペチーノが注がれたグラスがゴトンと置かれた。
安藤がキャラメルフラペチーノを差し出してくるほど、物ほしそうな顔をしていたのかと思うと、少し恥ずかしい。
「いりません!」
照れ隠しに語気を強めると、安藤があっさりとグラスを手もとに引き寄せた。キャラメルフラペチーノをひと口もらうつもりはまったくなかった。けれど、いざ目の前からグラスが遠ざかると、少し残念だなという感情が胸に広がる。