イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
駅に向かいながら考えるのは、今夜のこと。これから夕食の食材を買って、朝陽のマンションで料理するのが楽しみだ。
「ねえ、蓮くん。今日の夜ご飯、なにが食べたい?」
前回の子育て同居のときより作れる料理のレパートリーが増えた私は、なにをリクエストされても対応できると自信満々で蓮くんに尋ねた。でも……。
「ほのかちゃん。ぼく、きょうはおとまりしないよ」
「えっ?」
「ママのおしごとは、きょうだけなんだ」
予想もしなかった蓮くんの答えに驚き、慌てて朝陽に視線を向ける。
「五時に姉貴と新大阪駅で待ち合わせしている」
「……そうなんだ」
朝陽が送ってきた新幹線の乗車券の復路の指定日は明日。だから私は今日と明日の二日間、蓮くんを預かるものだと思っていた。
「黙っていてごめん」
「ううん」
お泊りしないと言う蓮くんに代わって、朝陽がその理由を説明してくれた。
早々と遊園地を出た訳に納得したものの、あと少しで蓮くんとお別れしなければならないことが寂しい。
一緒にいられるわずかな時間を惜しむように、蓮くんの小さな手をキュッと握った。