イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「本当だ。綺麗……」
眼下に広がる夜景は、色とりどりの宝石が散りばめられたように美しい。しばらくの間うっとりとその光景を見つめていると、朝陽が本題を切り出した。
「俺さ……。穂香と距離を置くって決めてから、死ぬ気で仕事がんばったんだ。それで先月、大阪支店に異動してから初めてトップになった」
朝陽が大阪支店でどんな風にがんばっているのか、横浜支店勤務の私は知り得ない。でも異動してからたった数か月で営業成績がトップになるのは、並大抵のことでない。
「朝陽、おめでとう!」
「サンキュ」
血のにじむような努力をした朝陽にお祝いの言葉を告げると、彼の顔に笑みが浮かんだ。
「それで……今まで内緒にしていたけれど俺……トップになったら穂香を迎えに行くって決めてたんだ」
私の前ではにかむ朝陽はかわいい。けれど照れる朝陽を見て、ほっこりしている場合じゃない。
彼が必死に『内緒』にしていたことを、同期の中山くんからすでに聞いたと知られたら、朝陽は拗ねるかもしれない。
「そ、そうなんだ」と必死でとぼけてみせると、引き続き朝陽の話に耳を傾けた。