イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
沈黙が続く中、コーヒーカップに手を伸ばせば、安藤もキャラメルフラペチーノに口をつける。そしてお互いのドリンクを飲み干すのが合図だったかのように、安藤が口を開いた。
「四日の金曜日から六日の日曜日まで、俺のウチに二泊三日だから」
二泊三日って、まるで旅行に行くみたいに軽く言わないでほしい。それに彼氏でもないただの同期である安藤と、ひとつ屋根の下で暮らすのはどう考えたっておかしいでしょ?
「いやいや、安藤のウチに二泊三日するなんて、絶対に無理だから」
首を左右に振って全力で否定をすると、目の前の安藤の口角が不気味に上がった。
「俺のおごりで回らない寿司、食っただろ?」
「あれは私の誕生日のお祝いでしょ?」
そもそも、回らないお寿司を食べたいと言い出したのは安藤だし、私は代金を払おうとした。今になって、おごったことを恩着せがましく言い出すなんて腹立たしい。
「俺の大トロ、食ったよな?」
大トロのにぎりは私が安藤にねだったのではない。
「あれも安藤が勝手に……」
「大トロ、うまかっただろ?」
鼻息を荒げて抗議したものの、すぐに言葉を遮られてしまった。
たしかにあの大トロは、頬が落ちそうなくらいおいしかった。あと五貫……。ううん、あと十貫は食べられる。
「……はい」
大トロがおいしかったことを認めた矢先、安藤が意気揚々と体の前で腕を組んだ。