イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「明後日の午前十時。このコーヒーショップの前で待ち合わせだからな。遅れるなよ」
「……」
私の同意もないまま、ひとりで次々に物事を決めていく安藤が気に入らない。唇を尖らせてムクれていると、腕組みを解いた安藤がテーブルに身をのり出した。
「明後日の午前十時。このコーヒーショップの前で待ち合わせ。いいな?」
澄んだ大きな瞳、通った鼻筋、キュッと結ばれた唇。間近に迫った安藤は、やはり美形だ。しかしいつもは凛々しい眉が、今は八の字に下がっている。
本当に困っているんだ……。
眉をひそめる安藤の姿を見た瞬間、心がザワザワと騒ぎ出した。
蓮くんを預かることに私を巻き込もうとするのは、ほかに頼る人がいないから。それほど切羽詰まっている安藤を、このまま見過ごしていいの?
NOとハッキリ言えないのが私の悪い癖。だったらYESと答えてしまえばいいだけだ。
「はい、はい。わかりました」
半ばヤケになって返事をすると、安藤の顔に明るい笑みが浮かんだ。
「サンキュ」
安藤に微笑みながらお礼を言われたのは、今日が初めて。不覚にも胸がドキッと音を立てた。けれどイケメンの微笑みパワーに圧倒されたのは、ほんの一瞬。私の決断は本当に正しかったのだろうかという思いが、頭をよぎり始める。
「……どういたしまして」
自分の優柔不断な性格をわずらわしいと感じつつ、面倒なことに私を巻き込んだ安藤を恨めしく思った。