イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「あ~あ……」

納得して引き受けたはずなのに、胸がモヤモヤする。キャリーケースに荷物を詰め込む作業を中断すると、ベッドにダイブした。

こんなことになるのなら、安藤にお寿司をおごってもらうんじゃなかった……。

誕生日だからという安藤の言葉に、まんまと騙されたことが悔やまれる。

安藤が私のお皿に勝手にのせた大トロを食べなければよかったし、安藤とお寿司を食べに行かなければよかった。そもそもファイリング作業を手伝ってもらわなければ、こんな面倒なことに巻き込まれずに済んだんだ……。

次々と押し寄せる後悔に頭を抱えていると、部屋のドアがノックされた。

「穂香。入るわよ」

「はい」

ドアを開けて私の部屋に入ってきたのは母親だ。ベッドの上で横たえていた体を起こした。

「ねえ、穂香……。あら? どこか行くの?」

床に散乱したままの衣類とキャリーケースを見た母親が、私に尋ねてくる。

「うん。明日から三日間、同期のウチに泊まるから」

同期に脅迫まがいなことを言われて、彼のウチで彼の甥っ子のお世話をすることになりました。とは、とても言えない。

「どこかに旅行に行くんじゃなくて、同期のお宅に泊まるの?」

「そう」

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