イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
すでに結婚して子供がいる同期や同級生もいるけれど、仕事や家事、そして育児に追われている様子を見聞きすると、彼女たちをうらやましいと思ったことは一度もない。
ひょっとしたら私は一生独身かもしれない。そう考えていると、母親が腰に両手をあてるのが見えた。
「まだ二十七歳じゃなくて、もう二十七歳でしょ! ボケっとしていたら、あっという間に三十歳になっちゃうんだから! 智花ちゃんは来年結婚するらしいし、尚美ちゃんは八月に赤ちゃんが産まれるのよ!」
仁王立ちして私に身近な人たちについて力説する母親は迫力満点だ。
ちなみに母親が言う『智花ちゃん』とは、向かいの家に住んでいる、私よりひとつ年下の幼なじみのこと。東京でひとり暮らしをしている彼女とは、ここ数年会っていない。
彼女が結婚することを初めて聞いてとても驚いたものの、焦りやうらやましいといった感情は込み上げてこなかった。
そして『尚美ちゃん』とは、母親のお姉さんの子供。つまり私のいとこだ。授かり婚をした彼女の披露宴には私も出席したから、八月に赤ちゃんが産まれることはもちろん知っている。