イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

母親は今の私と同じ二十七歳のときに、弟の悠馬を産んでいる。結婚を焦るどころか彼氏もいない私のことが、歯痒くて仕方ないのかもしれない。しかし、あてつけのように結婚や赤ちゃんの話をする母親は鬱陶しい。

「うるさいなぁ。で? なんの用?」

母親が私の部屋に姿を現した本来の目的を尋ねた。

「あ、そうそう。今日の夜ご飯。なにが食べたいかなぁ?と思って」

夕食の相談をしに来ただけなのに、話が大きく逸れたことがおかしくて、思わず失笑してしまった。

「一緒にスーパーに行こうか?」

母親にそう聞いたのは、食べたいメニューがすぐに思いつかなかったから。

毎日献立を考えて料理を作るのって大変そう。やっぱり実家暮らしは快適だ。と、ひとり思った。

「本当? 穂香が買い物につき合ってくれるのって久しぶりね」

「そう?」

「そうよ」

ベッドから立ち上がると、母親と一緒に部屋を出る。

母親とくだらないことで言い争いになることは日常茶飯事。でも何事もなかったようにケロッとするのも早い。

結局のところ、私と母親は仲良し親子ということだろう。

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