イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

徒歩十分にあるスーパーに到着すると、買い物カゴをカートにセットする。今の時刻は午後五時を過ぎたばかり。買い物客でにぎわう夕方のスーパーを、母親とともに進む。

「あら、キャベツが安いわね」

野菜コーナーの一角に置かれたキャベツのポップ広告には、たしかに“本日のオススメ品”と大きく書かれている。

母親はいくつかのキャベツの中からひとつ選ぶと、私が押しているカートのカゴの中に入れた。

「なんでこのキャベツにしたの?」

私にはどのキャベツも同じように見えた。母親がどうしてこのキャベツを選んだのかが、気になる。

「キャベツは外葉が緑の方が新鮮なのよ」

「へえ、そうなんだ」

「ねえ、穂香。あさりと蒸すのと、お肉と炒めるのと、どっちがいい?」

まだ買い物カゴにはキャベツしか入っていない。それなのに、もうふたつのメニューを考えつくとは、さすが主婦歴が長いだけある。

「あさりかな」

「了解~」

足取りも軽く鮮魚コーナーに向かう母親の後に続いた。そのとき、ベビーカーを押して買い物をしている女性とすれ違う。

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