イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「それは、それは、ご苦労様です」
嫌味たらしく頭を下げる安藤が憎らしい。
「ええ、本当にご苦労です!」
安藤の意地悪に負けてなんかいられない。
鼻息も荒く言い返せば、安藤が大きなため息をついた。
どうやら安藤は私と言い争うことをあきらめたようだ。
なんとなく勝ったような気がして胸を張る。そんな私を尻目に、安藤が目の前に屈み込んだ。
「ほら、蓮。挨拶は?」
しゃがんだ安藤の前にいるのは、赤いキャップをかぶった男の子。背中にはリュックを背負っている。
いけない! 蓮くんの存在をすっかり忘れていた!
大人げなく安藤と言い合ってしまったことを反省しつつ、急いで笑顔を作った。
「こんにちは。ごとう(後藤)れんです!」
蓮くんが大きな声で、自分の名前を口にする。
元気いっぱいに挨拶する蓮くんが微笑ましい。
「はじめまして。柴田穂香です。蓮くん、今日から三日間よろしくね」
蓮くんの目の高さに合わせて屈み込んで挨拶すると、すぐさま「うん!」という答えが返ってきた。
蓮くんが人見知りしない子でよかった。ホッと胸をなで下ろす。
「さて、行くか」
立ち上がった安藤が、蓮くんの手を握る。
「ねえ、安藤のウチってどこなの?」