イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

プラチナガーデンに到着すると、安藤は迷うことなく屋外にあるこども広場に向かった。

「俺と蓮で遊んでくるから、柴田は荷物番を頼む」

「了解。いってらっしゃい」

安藤は蓮くんの背中からリュックを下ろし、それをベンチの上に置いた。

「蓮、行くぞ!」

「うん!」

安藤と蓮くんが大型遊具に向かって走って行く。

今日の安藤は紺色のシャツにベージュのパンツスタイル。スーツにネクタイ姿しか見たことのない私にとって、カジュアルスタイルの安藤はとても新鮮だ。

休日に同期の安藤と会うなんて、変な気分……。

そんなことを思いながらベンチに腰を下ろすと、ふたりの姿を目で追った。

遊具の階段を上がった蓮くんが向かったのは、クルリと回転している滑り台。このこども広場では一番人気らしく、順番待ちの列ができている。しかし蓮くんは、そのことに気づいていないようだ。蓮くんが順番待ちをしている子をスタスタと抜かそうとした、そのとき……。

「蓮! 順番!」

滑り台の下から安藤が大きな声をあげた。

「あ、うん」

安藤の注意で順番待ちの列ができていることに気づいた蓮くんが、最後尾に並び直す。

子供って、こうやって社会のルールをひとつずつ覚えていくのかもしれないな……。

安藤が『子育て』という言葉にこだわっていた理由を、今ようやく理解した。

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