イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
私たちが案内されたのは、外の景色が一望できる窓際の席。みなとみらいのシンボルであるランドマークタワーも綺麗に見える。
安藤と蓮くんが横並びに、私はその向かいの席に腰を下ろす。そして安藤が先ほど決めたメニューをオーダーすると、蓮くんが思わぬことを言い出した。
「あさひとしばたは、けっこんしてるの?」
「えっ?」
蓮くんと初めて会ったとき、私は自己紹介として自分の名前を告げた。でも安藤との関係は説明してない。蓮くんが私の存在を不思議がるのは当然だ。
けれど五歳児の蓮くんに私と安藤は同期だということを説明したところで、どこまで理解してくれる?
頭を悩ませていると、安藤が蓮くんの顔を覗き込んだ。
「蓮。ちょっと待った。このお姉ちゃんのことを『しばた』って呼ぶのはダメ。いいな?」
「どうして? だって、あさひは『しばた』ってよんでいるでしょ?」
子供は大人の言動をよく観察している。
「安藤。別に『しばた』でいいよ」
蓮くんの言うことはもっともで『しばた』と呼ぶことを禁止したら、変に混乱させてしまうのではないかと思った。でも安藤の考えは少し違うようだ。
「いやいや、よくないだろ。今日初めて会ったばかりのオマエのことを『しばた』と呼ばせるのはよくない」
「……」