イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
蓮くんの両親が不在の今、保護者的な役割を担っているのは安藤だ。その安藤が『よくない』と思うのなら、私がこれ以上口出しするわけにはいかない。
安藤がどのような対処をするのか、ふたりを静観することにした。
「いいか、蓮。俺とこのお姉ちゃんは同じ歳で同じ会社で働いているんだ。だから俺はお姉ちゃんのことを柴田って呼ぶし、お姉ちゃんも俺のことは安藤って呼ぶ。でも蓮はお姉ちゃんと同じ歳じゃないし、同じ会社で働いてないだろ?」
「うん」
安藤の説明は、五歳児には少し難しいんじゃない?
私はそう思ったけれど、蓮くんは安藤の話をきちんと聞き、しかもちゃんと返事をしている。賢い蓮くんに感心しながら、引き続きふたりの会話に耳を澄ました。
「だから蓮はお姉ちゃんのことを『しばた』って呼んだらダメなんだ。蓮だって今日友だちになったばかりの子に『ごとう』って呼びつけにされてうれしいか?」
「……うれしくない」
「だろ? だから『しばた』って呼んだらダメ。わかったか?」
「うん」
「よし。いい子だ」
安藤はクシャッとした笑みを浮かべると、蓮くんの頭を優しくなでた。