イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「なに?」
続きを促すとすぐに、安藤が突拍子もないことを口走った。
「蓮を混乱させないように、これから柴田のことは『穂香』って呼ぶことにしたから」
「えっ?」
「だから柴田も俺のことを『朝陽』って呼べよな」
安藤は当然といった様子で、お互いの名前で呼び合うことを要求してきた。
私と安藤はただの同期。入社してから安藤のことはずっと『安藤』と呼んできた。それなのに蓮くんのためとはいえ、急に『朝陽』と呼べと言われても私の方が混乱してしまう。
「ちょ、ちょっと待って」
「なんだよ」
「無理だから。安藤のこと、名前で呼ぶのは無理だから!」
必死になって抵抗する私を見下すように、安藤の口角がニヤリと上がった。
「そんなに照れなくてもいいのに」
「照れてませんから!」
またこれだ……。
なにかつけて私をからかう安藤に冷ややかな視線を向ける。
「柴田が無理でも俺は穂香って呼ぶから。な? 穂香」
テーブルの上に頬杖をつき、余裕の笑みを浮かべて私をおもしろがる安藤が憎らしい。けれどこれ以上突っかかっては蓮くんをまた不安にさせてしまう。
「……勝手にすれば」
強がりを口にすると、おろしハンバーグに手をつける。
やっぱり私は同期のコイツが苦手だ。