イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
絵本を買うと、引き続きプラチナガーデンをのんびり歩く。
「なあ、今日の夕食、どうする?」
ついさっき、お昼を食べたばかり。お腹いっぱいの今、夜ご飯のことを聞かれても困るというのが正直な気持ちだ。
自分たちだけなら適当に外食で済ませばいい。でも五歳の蓮くんには食育も大事。二食続けての外食はできれば避けたい。
「安藤って自炊するの?」
「カレーとかチャーハンなら作れる。穂香は?」
当然のように『穂香』と呼ばれ、一瞬思考が止まった。けれど私のことを『穂香』と呼ぶと宣言した安藤に対して『勝手にすれば』と言ってしまった手前、今さら文句は言えない。名前のことは敢えてスルーした。
「私も簡単な物なら作れるけど」
「それなら、これから食品売り場に行って……」
安藤と夕食の相談をしつつ足を進める。すると蓮くんが突然「あっ!」という大きな声をあげた。
え? なに?
プラチナガーデンを進んでいた足が思わず止まる。その隙に蓮くんは安藤と繋いでいた手を振り解くと、一目散に走り出してしまった。
「蓮!」
予想外の出来事を前にして唖然とする私とは違い、安藤はすぐに蓮くんの後を追い駆ける。その様子を見てようやく我に返った私は、安藤が置いて行ったキャリーケースを転がしながら慌ててふたりを追った。