イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
安藤は冷静に蓮くんを諭す。しかし相手は五歳児。ほしい物を目の前にして、我慢できるはずがない。
「いやだ! ほしい!」
「だーめ」
ワガママを言う蓮くんに対して、安藤も負けてない。
「ほしい! ほしい! ほしい!」
蓮くんは大きな声をあげると、本格的に駄々をこね始めた。地団駄を踏み、うっすらと涙を浮かべる蓮くんを見て気になるのは、周りの視線。うるさいとか、見苦しいとか、かわいそう、とか思われたくない。
「ねえ、安藤。ベルトだけど……」
他人の視線が気になった私は、ベルトを買うことを安藤に相談しようとした。けれど……。
「買い与えることは簡単だけど、それじゃあ蓮のためにならない」
ベルトを買うことを、あっさり否定されてしまった。
「……だよね」
安藤の言うことは正しいとわかっている。でもこのままじゃ埒が明かない。
一刻でも早く蓮くんをなだめなければと焦っていると、安藤が蓮くんのキャップを頭から外した。
「蓮。明日どこ行く?」
「……」
蓮くんは大きな声をあげて駄々をこねることはやめたものの、うつむいて黙り込んだまま。
「蓮の行きたい場所に連れてってやる」
「……動物園」
ようやく聞こえてきた小さな声を聞いた安藤が、蓮くんの頭を優しくなでた。