イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
爪先立ちするとファイルに向かって、さらに手を伸ばした。すると長い腕が私の頭の上をスイッと通り過ぎて行った。
「ほら。チビ」
「……ありがとう」
私が背伸びをしても届かなかったファイルを、安藤は軽々と手にする。
受け取ったファイルを持つ手に力がこもったのは『チビ』と言われたことが悔しかったから。しかし身長が百五十三センチしかない私にとって、一番高い棚に楽々と手が届く安藤の高身長はうらやましくもある。
なにを食べたらそんなに大きくなれるのかと思いながら彼の姿をぼんやりと見つめていると、安藤が私に向かって足を一歩踏み出してきた。
えっ? なに?
急に縮まった距離に慌て、迫ってくる安藤から逃れるために足を後退させた。それでも彼は私との距離をさらに詰める。
真面目な表情を浮かべて近づいてくる安藤が、なにを考えているのかわからない。
ジリジリと後ずさりしていると書庫の壁に背中があたり、安藤の手が顔の横をかすめていった。
これって、壁ドン?
ひと昔流行ったとはいえ、私にとって壁ドンは初体験。壁に手をついたイケメンの安藤に至近距離で見つめられたら、心臓がバクバクと音を立て身動きが取れなくなってしまった。
「で? 手伝ってほしいの? ほしくないの?」
壁ドンの破壊力に驚いていると、目の前で安藤の口角がニヤリと上がる。