イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
夕方になり、夕食の準備に取りかかるためにキッチンに向かう。まずはカレーを作って、煮込んでいる間にコールスローサラダを作れば完璧だ。
鼻歌交じりに準備をしていると安藤がキッチンに姿を現した。
「穂香。米研いだ?」
「あ、まだ」
「なら俺がやるから」
「うん。お願い」
身長百五十三センチの私にはキッチンの高さは丁度いいけれど、高身長の安藤には少し低いようだ。腰を屈めてお米を研ぐ安藤の体勢は少しつらそうに見える。
「安藤って身長何センチ?」
「百八十三。穂香は?」
「私は百五十三センチ」
まさかの三十センチ差に驚いて隣にいる安藤を改めて見上げると、クスッと小さく笑われた。
「ちっちぇ。すぐ蓮に追い抜かれるな」
「……そうかもね」
低い身長に対して嫌味を言われているのに、ちっとも腹が立たない。むしろ雑談しながらキッチンで一緒に作業することが楽しいくらいだ。
気分よくカレーに入れる野菜の用意をしていると、Tシャツの裾をツンツンと引っ張られる。
「ぼくもてつだう!」
さっきまでライダーのDVDに釘づけだったのに、今ではヤル気を見せる蓮くんが頼もしい。
「それじゃあ、蓮くんにはジャガイモと人参を洗ってもらおうかな」
「うん!」
蓮くんのシャツの袖を捲り、その小さな手にジャガイモを一個握らせた。しかしカウンター式のキッチン内で三人揃って作業するのは、いささか狭い。
安藤と蓮くんには、リビングでライダーのDVDを見てくれている方が助かるというのが、私の本音。でも蓮くんのお手伝いしたいという思いは大事にしなければならない。
「蓮くん。すごく助かる。ありがとうね」
「うん!」
手際よく進まない工程にジリジリしつつも、根気よく蓮くんを見守ることにした。