イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
完全に拗ねちゃった……。
五歳の蓮くんを説得できないことが情けない。安藤に向かって両手を合わせ、小さな声で「ごめん」と謝る。すると安藤は穏やかな笑みを浮かべつつ、首を左右に振ってくれた。
後のことは俺に任せてくれ。安藤にそう言われたような気がして、ホッと気持ちが落ち着いた。
「よし、蓮。今日は一個だけ食べてみようか。一個食べたら残りの人参は俺が食ってやる」
安藤の言葉を聞いた蓮くんが、チラリと視線を上げるのが見える。
「……いっこだけでいいの?」
「ああ。一個だけなら食えるだろ?」
「……うん」
蓮くんはコクリとうなずくとスプーンを手に取る。そして人参がのったスプーンを口の中に入れた。
ギュッと目をつむって人参を咀嚼(そしゃく)する蓮くんの様子は健気でかわいい。心の中でがんばれ!と応援すれば、蓮くんが人参をゴクリと飲み込んだ。
「よくがんばった。えらいぞ、蓮!」
安藤の大きな手が、蓮くんの頭をクシャクシャとなでる。笑みを浮かべる蓮くんも誇らしげだ。
安藤の完璧なフォローのおかげで、蓮くんの顔に笑みが戻ったことがうれしい。