イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
人参事件も安藤の活躍で無事解決し、空になったお皿を前に手を合わせて三人で「ごちそうさまでした」と挨拶した。
本当だったら食後のコーヒーをゆっくり味わいながら、テレビを見てまったりしたい。けれど蓮くんにダラダラとした姿を見せては、教育上よろしくないだろう。
スクッと立ち上がると後片づけをするために、空になったお皿に手を伸ばす。すると安藤のスマホが音を立てた。
「お、蓮! ママからだぞ」
「ママから?」
「ああ」
スマホを蓮くんに渡した安藤が、応答ボタンを押した。
「蓮! いい子にしている?」
チラリと見えたビデオ通話の画面に映し出されたのは、綺麗な女の人。この人が蓮くんのママなのか、と興味深く様子をうかがう。
「うん! きょうはね、こうえんであそんでハンバーグたべて、それからほのかちゃんにえほんをかってもらったの」
今日の出来事をママに一生懸命説明する蓮くんの様子はとても微笑ましい。けれど、それも束の間。スマホ越しの声が急に険しくなったことに気づいた。
「蓮。朝陽と代わって」
「はーい」
蓮くんがスマホを安藤に渡す。安藤は大きなため息をついてスマホを受け取った。
「お疲れ」
「朝陽。ほのかちゃんって誰? 彼女?」
蓮くんのママ、つまり安藤のお姉さんが早口で問いただす。
「違うから。ただの同期。俺ひとりで蓮の面倒を見るのは自信なかったから、ヘルプを頼んだだけ」