イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

歯を磨いて寝室のベッドに入ると、蓮くんが本屋で選んだ動物の絵本を広げる。

「象のチビ助は大好きなりんごを大きな鞄に入れると、船に乗るために海に向かいました」

初めこそ食い入るように絵本を見ていた蓮くんの瞼が次第に閉じ始める。そして数分もしないうちに規則正しい寝息が聞こえてきた。

ぐずることなくすんなりと寝入ってくれたことにホッと胸をなで下ろし、蓮くんの寝顔をじっと見つめた。

かわいい……。

そのあどけない寝顔はずっと見ていても、きっと飽きることはないと思った。でもこれから、夕食の後片づけと明日のお弁当の下ごしらえをしなければならない。

蓮くんに「おやすみ」とつぶやくと、名残惜しくベッドから出た。



「蓮は?」

リビングに戻った私の耳に聞こえてきたのは、蓮くんを心配する安藤の言葉。ひとりリビングで悶々としていたのかと思うと、少しおもしろい。

「すぐに寝ちゃったよ。疲れていたんだね」

「そっか。穂香」

「なに?」

「蓮を風呂に入れてくれたり、絵本を読んでやってくれて、ありがとな」

普段は私をからかっておもしろがるくせに、蓮くんのことが絡むと細かい気遣いを見せる安藤にまだ慣れない。

「ううん。気にしないで」

なんとなく照れくささを感じつつ、夕食の後片づけをするためにキッチンに向かった。けれど洗い物はすべて終わり、キッチンは綺麗に片づいていた。

「安藤、お皿洗ってくれたんだね。ありがとう」

カウンター越しにお礼を言う。

「いいえ、いいえ。俺ってさぁ、気が利くよなぁ」

< 70 / 210 >

この作品をシェア

pagetop