イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
蓮くんを寝かしつけている間に安藤が後片づけをしてくれたおかげで、たしかに私の負担は減った。けれど得意げに背筋を伸ばし、がんばった自分アピールをする安藤は少々ウザい。
まともにつき合っていたら、こっちが疲れる……。
「はい、はい」と適当に返事をすると、冷蔵庫を開けて食材を取り出した。
「なにすんの?」
安藤がキッチンに入ってくる。
「明日のお弁当に入れるから揚げの下味をつけておこうと思って」
「へえ、下味ねぇ。カレーもうまかったし、穂香って料理上手なんだな」
親と同居しているため、家事のすべては母親任せ。簡単な料理ならレシピを見なくても作れるけれど、褒められるほどの腕前ではない。
「そ、そんなことないよ」と口ごもると、私の隣に並んだ安藤が腕まくりをした。
「で? 俺はなにをすればいい?」
積極的に手伝いをしてくれようとするのは、とてもありがたい。けれど下ごしらえは安藤の手を借りなくてもすぐに終わるし、キッチンにふたりきりになるのはなんとなく気まずい。
「安藤、お風呂まだでしょ? こっちは私ひとりで大丈夫だから入ってくれば?」
「……いいのか?」
安藤は腰を曲げると、私の様子をうかがうように顔を覗き込んできた。大きな瞳に通った鼻筋、少し厚みがある形のいい唇。やはり安藤はカッコいい。
「う、うん。どうぞ」
端正な安藤の顔が急に近づき、胸がドキリと跳ね上がる。
「サンキュ」
ニコリと微笑んだ安藤が、鼻歌を口ずさみながらキッチンから出て行った。
安藤は同期。それ以上でもそれ以下でもないはずなのに、彼のイケメンオーラに振り回されてしまうことが情けない。
「ふう」と息をついて気を取り直すと、作業に取りかかった。