イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「これでよしと」

明日のお弁当の下ごしらえも、キッチンの後片づけも終わった。あとは明日に備えて寝るだけだ。

明かりを消すとキッチンを後にする。そのとき、体がなにかにドンとあたった。

「キャッ!」

思いがけない衝撃を受けて体が後方に傾いた私の耳に、安藤の冷静な声が届いた。

「大丈夫か?」

どうやら出会いがしらに、安藤と衝突してしまったようだ。

転ぶことを覚悟したものの体に痛む箇所はないのは、足音もなく姿を現した安藤に支えられているから。彼の大きな手が腰に回り、お互いの体は隙間なく密着している。しかも安藤は、何故か上半身裸。

「な、な、なんで裸なのよ!」

「だって暑いじゃん」

たしかにお風呂から出たばかりは暑いかもしれない。だけど女子の私の前で、裸体をさらけ出すのはマナー違反じゃない?

「もうっ! 早く服着てよ」

安藤の体に手をあてると、力を込めて押し返す。

「へい、へい」

面倒くさそうに返事をした安藤の脇をするりと抜けると、リビングへ慌てて避難した。適度に割れている安藤の腹筋が頭にこびりついて離れない。

頬が火照るのは、お風呂上がりの安藤の熱い素肌に触れたせい? 安藤の裸を見て興奮しているようで恥ずかしい。

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