イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
熱い頬を隠すようにソファに腰を下ろし、膝を抱えてうつむいた。すると「穂香。ビール飲む?」と安藤に声をかけられる。今の私に冷たいビールは丁度いい。
「うん、飲む」
「了解」
速攻で返事をした私のもとに、白い半袖シャツを着た安藤が姿を現した。左手で肩からかけたタオルで髪の毛を拭き、右手で缶ビールを二本持つ安藤のその姿に、色気と男らしさを感じた。
私の隣に腰を下ろした安藤が、缶ビールのプルタブをプシュッと開ける。
「どうぞ」
「ありがとう」
安藤から缶ビールを受け取ると、彼はもう一本の缶ビールのプルタブを開けた。そして私が手にしている缶ビールにコチンとそれを合わせる。
「穂香。今日はお疲れ。明日もよろしく」
安藤の口から出たのは『乾杯』ではなく、私を労う言葉。頬が火照っていることも忘れて膝を抱えていた手を解き放ち、安藤を真っ直ぐ見つめた。
「安藤もお疲れさま」
冷えた缶ビールに口をつけると、爽やかな苦みが喉を通り過ぎていった。仕事終わりのビールに負けないくらいおいしいと感じるのは、今日一日が波乱万丈だったから。子育ては一筋縄ではいかないと、身をもって実感した一日だった。